技術通信

ホーム > 技術通信

「有珠山噴火と復旧治山対策30周年」記念講演会 H23.519

「有珠山から世界へ」
~我が国の火山噴火復旧治山対策の活用~


 北海道大学大学院農学研究院
 教授 丸谷 知己氏

北海道民有林治山林道100選講演会 H21.5.20

第一部

「治山それは森・地域(まち)づくり」

 NPO法人環境防災総合政策研究機構理事
 北海道大学名誉教授 新谷 融氏

第二部

「森林路網とその役割について」

 独立行政法人森林総合研究所北海道支所
 主任研究員 佐々木 尚三氏

2009 11月10日(火)

林内道路における木質チップを利用した濁水濾過工法
林業試験場 森林環境部 
佐藤弘和

木質チップの活用
 最近では,木材の需要拡大を目的として木質チップ(以下,単にチップと呼びます)の様々な利用方法が検討されています。林業試験場では,これまでチップによる雑草抑制効果や土壌凍結防止効果などについて検証してきました。一方,治山事業や林業経営を行う上で重要な基盤である林内道路(林道や作業道,管理道を含む)では豪雨や融雪時に路面の侵食による濁水発生も生じることがあるため,その抑制にチップを活用することも検討しました。ここでは,チップを利用した林内道路における濁水濾過工法について紹介します。

木質チップによる林内道路の保護効果
 林内道路においてチップを使用したとき(特に砂利の代わりに路面材として利用した場合)の効果と利点として,
①雨滴による路面侵食防止
②地表流保持による路面侵食の防止
③敷設地外から流れ込んだ濁水の濾過
④走行時の振動緩和
⑤常時泥濘化する路面において通行可能
⑥路面由来の粉塵飛散の抑制
⑦底すりによる車体損傷の防止
⑧雑草抑制による路面の維持
⑨路面凍結防止
⑩補修が容易
などが考えられます。このうち,①~③が路面上を流れる濁水発生の抑制に関与しています。

木質チップによる濁水濾過工法のタイプ
 林内道路における濁水濾過工法としては,既設の道路構造をそのまま利用するタイプとして,
①既設の側溝にチップを充填する「側溝充填型」
②路面にチップを敷き詰める「路面敷設型」
が考え出されました。しかし,これらのタイプには,解決しなければならない問題もあることがわかりました。そこで,こうした問題点を改善した新たなタイプとして
③道路の中央部に溝を掘りチップを充填する「中央暗渠型」
を考案しました。

既設の側溝にチップを充填する「側溝充填型」
 既設の側溝内に透水性のある排水管を設置し,チップで充填したものです(図-1A)。このタイプは,住友林業株式会社紋別事務所により開発されました。住友林業社有林において濾過効果を検証したところ,降雨時に排水される水量は明渠区間(素掘りの側溝)の水量の20~40%に抑えられ,微細土砂(粒径0.1mm以下)の濃度も明渠区間に比べて低下しました。しかし,高濃度の微細土砂流出が起こるほど,濾過効果が減少する傾向もみられました。また,北海道水産林務部森林環境局と空知森づくりセンターの協力により,月形町の青月林道に接続する作業道に設定した試験区間においても,側溝充填型から流出する微細土砂量が砂利区間(図-1D)のそれより少ないことを示しました。
 ただし,このタイプでは,切取のり面の崩落土砂による埋没や,側溝断面積の減少による排水能力の低下などの問題を含んでいます。

路面全体にチップを敷く「路面敷設型」
 このタイプは,まず北海道のえりも町で実施された後に全道的に活用が広がったもので,砂利の代わりにチップを路面に敷き詰めた形態です(図-1B)。敷設するチップの敷厚は,コストの面から10cm としている例が多い傾向にありました。先述の試験区間では,路面敷設型区間から流れ出た微細土砂量は,砂利区間に比べて少ない結果でした。
 このタイプでは,チップが砂利に比べて軽いことから,流亡しやすいことが懸念されます。そこで,北海道各地で敷設されたチップ路面材の残存状況を調べたところ,強風などでチップがほぼ消失した例はわずか1例で,ほとんどの地域では圧密されているものの,チップは残っていました。しかし,ゲリラ豪雨によってチップが流亡してしまった事例もありました。また,針状に粉砕されたチップを利用した例では,重機走行により路面の土とチップが混合し(ササの根が絡んだ状態に類似),スコップでは掘れないほど固められていました。
 林内道路に敷設された箇所を対象に,チップが残存している厚さや表面の凹凸具合に関連している要因を調べてみました。残存敷厚は,当然といえますが最初に敷いた厚さ(初期敷厚)が厚いほど残っており,勾配や運材車両が走行した影響はありませんでした。敷厚の凹凸具合は,初期敷厚が薄いほどばらつき,運材車両が走行した影響を受けていました(目視ですが,道路のように車両の進行方向が一定(往復)ではなく,土場のように車両が縦横無尽に走れる場所ほど乱れる傾向にありました)。コストのこともありますが,チップを残すためには最初にやや厚めに敷く方がよいでしょう。

路面中央に木質チップを充填した暗渠をつくる「中央暗渠型」
 側溝充填型を導入した場所における問題点には,切取のり面からの崩落土砂による埋没がありました。また,路面敷設型では,車両走行の影響による乱れがあります。そこで,これらの問題を解決する構造として,新たに側溝ではなく路面中央部(わだちとわだちの間)にチップを充填した暗渠を新たに考案しました(図-1C)。このタイプであれば,車両走行の影響も少なく,切取のり面からも離れているので埋没することもないため,濁水濾過効果の持続が期待できます。月形町の試験区間における検証では,このタイプから流出する微細土砂量は砂利区間のそれより少ない傾向にありました。中央暗渠型は,まだ試験施工の段階であるため,施工事例数が少なく問題点については顕在化していません。ただし,道路のカーブにおいては車両に内輪差が生じることで道路中央にある暗渠上を走行する可能性が高いので,カーブには施工しないほうがよいでしょう。
 ファイル 44-1.jpg
図-1 木質チップを利用した濁水濾過工法(月形町の試験区間)

林内道路における木質チップを使った濁水濾過工法の導入に向けて
 ここでは3つのタイプの濁水濾過工法について紹介し,従来の砂利路面に比べてどのタイプも濁水濾過効果があることを説明しました。ただし,それぞれのタイプには一長一短があるため,「このタイプが一番よい」ということはなく,現場の状況に合わせてタイプ選択することが必要です(表-1,2)。また,簡単な室内実験によってチップ自身に濁水濾過効果があることは確認していますが,微細土砂が高濃度であったり継続して流れ込んでしまったりすると濾過能力が低下する傾向でした。チップの流亡についても,ゲリラ豪雨のような短時間に降る強い降雨強度の雨には耐えられません(砂利でも流亡することがあります)。さらに,今後の検証も必要でしょうが,チップの腐朽による濾過機能の低下なども検討しなければなりません。いずれにしても,濁水濾過工法を導入した場合,その効果について事後モニタリングを行い,その情報を現場にフィードバックすることが重要です。
表-1 各タイプにおける長所と短所
ファイル 44-2.jpg
表-2 各タイプの施工条件として考えられること
ファイル 44-3.jpg

ページ移動

  • 前のページ
  • 次のページ